登山の服装の基本は重ね着ですが、ミドルレイヤー(ミッドレイヤー)は保温のためだけではなく、コンディションに応じて様々な機能性を求められます。今回はミドルレイヤーの選ぶポイントと、フリース、ダウン、ソフトシェルについて1着目におすすめのウェアをまとめました。
ミドルレイヤー(ミッドレイヤー)を選ぶポイント
ミドルレイヤー(ミッドレイヤー)を選ぶポイントには吸水性・透湿性や保温性、防水性・撥水性、ストレッチ性、軽量性等があげられますが、いずれも100点の評価となるウェアは存在しません。状況に応じて対応できるようにいくつかの種類のウェアを持っていると快適に行動することができます。まずはミドルレイヤーを選ぶポイントを正しく理解してください。
吸水性・透湿性
登山ウェア全般に必要な機能が吸水性(皮膚の表面から汗を吸収して外側に逃がす性能)と透湿性(内部の湿気や水蒸気あを外に逃がす性能)になります。これらの機能はベースレイヤーのアンダーウェアだけでなく、もちろんミドルレイヤーにも求められます。
ベースレイヤーで吸収した水分や透過させた湿気がミドルレイヤーをスムーズに通過できないと、いつまで経っても内部で水分が滞留して蒸れてしまいます。ミドルレイヤーについても特に春夏秋で汗をかくことが多い天候の場合は重要になってきます。
保温性
登山では天候や体感温度が変わりやすいもので、行動中に暑いと感じていた直後に少し休憩するだけですぐに肌寒くなることもしばしば。稜線に出ると強風で体温を奪われることもあります。
夏場に保温性を重視する場面は少ないですが、その日の天気によって微調整は必要になってきます。吸水性・透湿性や軽量性などの特徴とトレードオフな部分があるのでその点はウェア選びの時に必要なバランスをよく考えて下さい。
もちろん厳冬期の雪山登山などは大汗をかく機会も少ないので保温性重視でウェアを選択しましょう。
防水性・撥水性
「防水」と「撥水」は似ているようで実は異なる性質です。「防水」はゴアテックスに代表されますが、素材自体が雨など水分を通さない繊維構造になっているのに対し、「撥水」は繊維自体は水分を通すが表面に水を弾くコーティングをしているものになります。
「登山にはレインウェアを必ず持っていくべきだ」と言われることが多いと思いますが、海外に比べて日本の山は天候が変わりやすく雨が多いことが理由です。
防水性能を持つウェアや登山靴はゴアテックス等の防水層(レイヤー)が間に挟まった生地になるため、その分重たくなるデメリットがあります。雨が少ない海外生まれのブランドのウェアや登山靴は防水性能を省略したものも比較的多く、雨には弱いですがその分軽量で軽快に動ける点がメリットになります。
防水ウェアに比べると撥水ウェアは軽量になる傾向があるため、防水はレインウェアやアウタージャケットに任せてミドルレイヤーは動きやすさや軽さを重視するという選択肢もありです。
ストレッチ性(動きやすさ)
春や秋など少し肌寒い時期は行動中もミドルレイヤーを着たままでいることが多いですが、そのような場合はストレッチ性、動きやすさを重視するとストレスなく行動できます。
ストレッチ性は下半身のトレッキングパンツで非常に重要な選ぶポイントですが、登山道の状況によっては上半身も動きやすいほうが有利な場面もあります。例えば傾斜がある斜面や鎖場、クライミング時などは手を使う場面があるので肩回りが動かしやすいウェアだとストレスがありません。
軽量・コンパクトかどうか
最近の登山用品はどんどん高性能化・軽量化しています。「ウルトラライト」「ファストパッキング」という言葉をよく聞くようになったと思いますが、登山用品であればテントをツェルトに変えたり、ウェアも止水ジッパーやポケットなどの機能性を削ってシンプルで軽量化とポケッタブルな携行性を優先したりする人が増えています。
ミドルレイヤーについても、夏山であれば山頂の風を防ぐための防風性だけあれば問題ないですし、多機能高スペックのウェアが毎回必要なわけではありません。必要スペックを満たすものであれば可能な限り軽いミドルレイヤーを選んだほうが疲労が少なく快適な行動ができます。
何かと機能ばかりに目が行きがちだとは思いますがぜひ軽量性と携行性にも目を向けてミドルレイヤーを選んでみて下さい。経験が増えてくるとわかると思いますが、一つの万能ウェアというものはなかなかないので状況に応じて様々なウェアが欲しくなってくると思います。
体温調節のしやすさ
ミドルレイヤーを着たまま行動して暑くなってきたときに熱気を逃がす通気口が多いウェアは体温調節がしやすいと言え、行動着に適しています。通気口としてはフロントジッパーやシャツのボタン、脇の下のベンチレーター、ポケットがベンチレーターも兼ねるもの等があります。
上記にも記載しましたが、ジッパーやポケットが多いと重くなって収納もかさばるようになるため、軽量・コンパクトとは若干トレードオフな部分もあります。
ミドルレイヤー(ミッドレイヤー)の種類と特徴
フリース
フリースの一番の特徴は柔らかな肌触りです。起毛素材でできているので軽くて保温性が高いですが、かさばるので荷物をコンパクトにしたい人にはおすすめしません。また、フリースは下山後や普段使いでも山以外で馴染むデザインが多いので、普段使い兼用で選ぶという考え方もありだと思います。
ダウン(インシュレーション)
ダウンの特徴はミドルレイヤーの中でも保温性が最も高く、それでいてかなりコンパクトに収納できる点です。特に冬用のミドルレイヤーとしてインナーダウンは重宝されます。
ソフトシェル
ミドルレイヤーでもアウターでも使えるウェアがソフトシェルです。耐久性と防水性が高いアウターのハードシェルと明確な線引きはありませんが、一般的には薄くてストレッチ性が高く撥水コーティング程度で機能性も省略して軽量化したものが多い傾向です。
雨が少ない欧米では防水性能を省略したソフトシェルの人気がありますが、日本の山においては雨のことも気にしながら選びましょう。
風だけを防ぐ目的に特化したペラペラのウェアがウインドシェル(ウインドブレーカー)です。かなりコンパクトに持ち運びできるので、夏山用の上着としてだけでなく、旅行にも持っていきやすいです。
登山シャツ
山シャツはミドルレイヤーの中では最も保温性は低く、温度調整力も低いですが、一番カジュアルで移動中の街中でもそのまま着ることができるウェアだと思います。夏場で日陰や強風で少し肌寒いと感じるときだけ羽織る程度であれば山シャツで問題ありません。おしゃれ重視でいきましょう。
1着目におすすめのミドルレイヤー(ミッドレイヤー)
買って損しない、初めてのミドルレイヤーにおすすめのアイテムを紹介します。いずれも薄手で重ね着しやすいのが特徴です。
【フリース】モンベル クリマプラス100
フリースの鉄板モデルがモンベルのクリマプラス100です。薄手なので暑すぎず春夏秋の3シーズンに使えます。着た瞬間思った以上の軽さを感じるはずです。普段使いする人も多い人気商品なので、普段着としても使いたい人におすすめです。
【ダウン】モンベル スペリオダウンジャケット
モンベルの中でも重ね着しやすい薄手のダウンジャケットになります。スタッフバッグ付きでコンパクトに収納して持ち運びできるので旅行などにも使えます。重ね着できて単体でも保温性が高いミドルレイヤーを探している人におすすめです。
【ソフトシェル】モンベル O.D.パーカ
ソフトシェルというよりウインドシェルといえるかもしれませんが、小雨程度であれば問題ない程度の撥水性能を持ちます。かなりペラペラなので防寒性が必要な場合は重ね着必須ですが、保温性よりもストレッチ性や撥水性を求める人におすすめのミドルレイヤーです。
関連記事
ミドルレイヤーを含む登山の服装についてはこちらの記事にまとめています。
ミドルレイヤーの下に着用するベースレイヤーについてはこちら。なぜベースレイヤーの重要性について、ユニクロのヒートテックについて、おすすめウェアについてまとめています。
アウター(防寒着)はこちら。ハードシェル、ソフトシェル、ライトシェル、レインウェアの違いなどをまとめています。