登山では他のスポーツと同様にスポーツドリンクなどの飲料をはじめ、ビタミンやアミノ酸などのサプリメントの利用が盛んに行われています。傾斜地を登り下りし、岩場をよじ登るような行動において、どんな栄養素が重要となってくるのかをしっかりと理解し、また、なぜ分割して摂取すべきかを理解し、行動食・携行食やサプリメントを選びましょう。
行動食や携行食の選び方。登山で摂取すべき5つの栄養素
行動食を選ぶ際、ただ持ち運びやすい食事を行動食として持っていけば良いというわけではありません。登山の行動食や携行食として持っていくものを選ぶ時は体に必要な栄養素を理解することが重要です。必要な栄養を行動食によって摂取することでパフォーマンスを落とすことなく動くことができます。行動食を紹介する前に、まずは登山で必要な栄養素を解説します。
- 糖質
- タンパク質
- 脂質
- ビタミンB1
- ミネラル
糖質
糖質は、脂質とタンパク質と共に3大栄養素の一つであり、最も使いやすいエネルギー源です。糖質が摂取されると体内でグリコーゲンとして肝臓と筋肉に貯蔵されます。過剰に摂取すると中性脂肪に変換されて体内に蓄積するため、注意が必要です。
登山の行動中は、登りは糖質と脂質が主なエネルギー源になります。岩登りなどの手足を使う急な登りでは、無酸素運動の比重が高くなり、グリコーゲンや筋肉のタンパク質を分解してエネルギー源とします。
岩登りをメインに行う人は日常からタンパク質を多く摂取しておくとよいでしょう。一方、下りは常にブレーキをかけた状態で歩くため、糖質をエネルギー源にする割合が増えます。
このため、下りでは行動食で糖質の補給が欠かせません。補充しないと血糖値が下がり、低血糖を引き起こす事もあります。糖質はご飯やラーメンなどの麺類に含まれていますが、市販のスポーツドリンクにも糖質が含まれているため、スポーツドリンクを活用するのもひとつの方法です。
ただし、市販のスポーツドリンクには4〜6%の糖質が含まれていますが(※VAAMなど例外はあります。)、糖質の吸収率が最も効率的なのは2.5%程度のため、行動中は半分に薄めて飲む、もしくは水と半分ずつ飲む形がよいでしょう。
粉末から作る場合は注意が必要です。10%以上の濃度にしてしまうと、血糖値を下げようと体が反応してインスリンが分泌され、インスリンが出ると血糖値を下げるため、摂取した糖質がエネルギーに変わることなく体内に蓄積されてしまいます。
タンパク質
代謝を促進するために発生する熱エネルギーはタンパク質が30%と最も高くなっており(糖質5%、脂質4%)、消化器に一番大きな負担がかかります。
大量のエネルギーを消費する登山の前に大量のタンパク質を摂取することは避けた方がよいでしょう。食べるなら下山の後にすべきです。山中でおなかを壊して下痢になってしまうと行動できなくなり、最悪の場合は遭難の可能性もあります。
脂質
脂質は中性脂肪という形で皮下脂肪や内蔵脂肪として蓄積されています。歩く速度が上がると、糖質を消費する割合が増加し、ゆっくり歩くと脂質を消費する割合が多くなります。
長時間の行動は脂質が必要となります。登山で8時間行動すると、4,000kcal以上消費すると言われており、通常通りの3食だけで補うことは難しいため、行動食が重要となってきます。
ビタミンB1
ビタミンB1は糖質をエネルギーに帰るための重要な働きをします。せっかく糖質を摂取しても、十分なビタミンB1がないと、エネルギーに変わりにくくなってしまいます。
普段から運動をしている人が山でばててしまったケースはビタミンB1不足の可能性があります。ただし、ビタミンB1は食事での摂取が難しい栄養素であるため、豚肉や胚芽に多く含まれますが、加熱すると壊れてしまいますが豚肉を生で食べるわけにはいかないので、ビタミン剤などのサプリメントによる摂取が効果的です。
ミネラル
登山で大量に汗をかくと塩分を失います。脱水によりナトリウムの濃度が下がると、倦怠感やめまいなどの症状が出てくる熱疲労がおきます。
また、カリウムの濃度が下がると、足の痙攣などが起こります。ナトリウムは塩分が多いラーメンなどで補給しやすく、カリウムはバナナや山芋に多く含まれているので、登山の朝食としてバナナは人気の食材です。
行動食・携行食やサプリメントが重要な理由
1グラム当たりの熱量を比較すると、糖質とタンパク質が4kcalに大して、脂質は9kcalと2倍以上です。つまり、少ない量でなるべくエネルギーを多く補給する場合は脂質を多く含んだ行動食・携行食が効率的です。
行動食と食事を分けるのは、一度に大量の食料を摂取すると、消化器に負担をかけて消化不良を起こさないためです。食後は消化器に血液が集中しますが、運動すると筋肉に血液が集中するため、大量の食料を摂取すると消化不良を起こしやすくなります。
消化不良を起こさないためにも、行動食やサプリメントで分散して栄養を摂取することが重要です。
登山にはどんな行動食・携行食が適しているか
カロリーが高めなもの | 食事だけで不足するエネルギーを補充することが行動食の一番の目的です。普段はカロリーを気にすることが多いと思いますが、登山ではバテないようにしっかりカロリーを摂取しましょう。 |
糖質・脂質・ミネラルをしっかり含むもの | カロリーと合わせて、糖質・脂質・ミネラルのバランスもよく考えましょう。脂質のほうがカロリー効率は高いですが登山では糖質をエネルギーとする場面が多く、夏場など汗を大量に書く場合は塩分補給は行動食の重要な役割です。 |
食べやすいもの・小分けになっているもの | 栄養とはまた別の話になりますが、行動しながら食べれる大きさや食べやすさはもちろん重要です。小分けにしてウエストポーチやサコッシュに入れておくと取り出しやすいでしょう。 |
おすすめの行動食・携行食
ジェル(ゼリー)状の飲料
shotz ショッツ エナジージェル (カーボショッツ)
人間の体がある一定期間に吸収できる炭水化物(=糖質)には限界がありますが、ブドウ糖と果糖を2:1でブレンドしたブドウ糖を摂取すると、ブドウ糖単体を摂取した婆に比べて20%〜50%のエネルギーを筋肉に運び、8%も持久力を上げるという研究結果が出ています。
登山家に人気なポイントは、低温でも凍らない点。高山や雪山でも安心です。特に寒い地域で行動する場合はおすすめの行動食・携行食です。
WINZONE エナジージェル
ジェル状の飲料は行動食を想定されているため、コンパクトにする分甘みが強く、粘度が高い商品が多いですが、この商品は甘さも控えめでさらっとしているため、飲みやすさに定評のある行動食・携行食です。
明治 ザバス ピットイン エネルギージェル
こちらもおすすめのジェル飲料になります。梅風味とピーチ、栄養ドリンク風味の3種類があり、こちらも飲みやすさが人気の行動食・携行食です。
クッキー
軽くて糖質や脂質が多く含まれているクッキーは登山の行動食・携行食に非常に向いています。特に小分けになっているカントリーマアムは持ち運びにも便利で非常に使いやすいです。
チョコレートと違って高温になった場合も解けてベトベトに、なんてこともないのでとにかく使いやすいです。是非登山に持って行きたい行動食・携行食です。
柿の種
甘いものが苦手という人にはこちらがおすすめです。柿の種は糖質が多いおかきと、脂質が多いピーナッツをバランス良く摂取することができる点と、やはり小分けになっているところも登山の行動食として扱いやすいポイントです。
また、テントや山小屋で一杯飲むときのおつまみとしても使えるため、登山に持って行くと使いどころに困らない行動食・携行食です。
カロリーメイト
カロリーメイトは行動食・携行食としても使えますし、日常で忙しくて朝食が取れない時にぱっと食べる時にも使えます。賞味期限が長いので、登山に持って行って使わなかった場合は次回にも持ち越しできます。
Amazonでまとめ買いすると安いので、買い置きしておくと登山と日常使いの両方に活用できます。
羊羹
変わり種ですが、羊羹も行動食とした人気です。栄養素、携行性、手が汚れない点、食べ応え、味、どれをとってもかなり満足度の高い行動食・携行食です。単純に栄養があるだけでなく、和の甘さがあると元気になります。行動食は自分の好みで選ぶことも重要です。
以上、代表的な行動食をご紹介してきました。他にも行動食はいろいろありますのでこちらも参考にしてみてください。
おすすめのサプリメント
明治 スーパーヴァーム顆粒
ヴァームの最上位アイテムがスーパーヴァームです。運動時に「使用するエネルギーは主に、体内に蓄積された糖質であるグリコーゲンと体脂肪がありますが、グリコーゲンには限りがあり、体重60kgの人で1,800kcalです。
また、エネルギー源はグリコーゲンから使用され、運動開始後20~30分たたないと体脂肪は積極的に燃焼しないとされていますが、ヴァームはその燃えにくい体脂肪の燃焼をサポートする独自のアミノ酸素材などが配合されています。
ゼリータイプとドリンクタイプもありますが、こちらは顆粒タイプで携行性が高く飲みやすくなっています。持久力に不安がある方や、ダイエットにも取り組んでいる方におすすめのサプリメントです。
アミノバイタル プロ・アミノバイタル GOLD
アミノ酸系のサプリメントの代名詞ともなっているアミノバイタルシリーズ。登山の前後と最中の3回に摂取すると効果的です。
アミノ酸を食事のタンパク質から摂取しようとすると、体内に吸収するまで3〜4時間かかってしまいますが、サプリメントなのでアミノ酸の形で摂取すると約30分で吸収される即効性が大きなメリットです。
子分けになった粉末なので持ち運びにも便利です。成分に応じて、プロとGOLDのラインナップがあります。持久力に不安がある方や、とにかく今日は頑張るぞ!という方におすすめのサプリメントです。
アスタビータ スポルト
鮭や蟹などの海洋生物に含まれる赤い色素である、アスタキサンチンはマリンビタミンと呼ばれるカロテノイドの一種類です。
アミノ酸と特に違うポイントは、細胞膜に浸透しやすい点にあります。このアスタキサンチンは疲労や筋肉痛を回復させる成分として知られており、疲労回復をサポートします。継続してトレーニングをしている方や、翌日に疲労を残したくない方、疲れにくい体になりたい方におすすめのサプリメントです。
サプリメントはとても多くの種類があります。一歩先のチャレンジができるように、自分の体にあったサプリメントを探すとよいでしょう。
その他の登山の行動食やサプリメントの例
アミノバイタル でエネルギーチャージしてからの、行動食は羊羹😝明日は早起きして、一の森〜剣山へGO❗️ #登山 #剣山 #一の森 pic.twitter.com/kATadE6jgr
— みつを (@habuhiko) September 29, 2017
スーパーで買った週末の登山の行動食。リュックのスペースをとらない手の平サイズの薄っぺらなフォルムはウルトラライトの60g!かつ360kcalというハイカロリー!しかもお値段94円!その名も「メルヘンハットのみみ」!うっかり賞味期限見るの忘れて買ってしまった… pic.twitter.com/I3yTkakALH
— rana@EXP京都2千葉千秋楽! (@rana_kuon) October 4, 2017
自分が提案したいのは「ナルゲンのボトルに色々好きなものを詰めてボリボリする」です
登山やトレラン、MTBではポピュラーな行動食の1つですが、バス釣りでも応用できると思うんですよね pic.twitter.com/qsIMUsXWdX— 鴇田屋、お主も悪よのう (@tokitaya6100) November 29, 2017
明日の登山の行動食が酒のつまみでしかない件について pic.twitter.com/ME8JJd86zz
— kitri8080 (@kitri8080) November 18, 2017
長岡と富士登山用のサプリメント調達。富士登山の行動食は後で買う。基本的にメダリスト信者。 pic.twitter.com/G24nYfPuqk
— 石谷玲💳️✈️📱🍜✒️Blog書く🚴乗り (@R_I) June 26, 2016
行動食・携行食とサプリメントを活用してバテない登山を
登山は常にエネルギーを使い続ける特殊なスポーツと言えます。マラソン選手が補給ポイントで随時エネルギーを補給しているように、登山においても行動食や携行食、サプリメントをこまめに摂取して行動することをおすすめします。好みの味の行動食を見つけると移動中の楽しみも増えるので、いろいろな行動食を試してみてください。
また、快適な登山をサポートするという意味で、高機能な登山タイツや膝サポーター、トレッキングポールで体を補助するという手も合わせると効果的です。