ソフトシェルはストレッチ性、撥水性、通気性のバランスが高く、アウターとしてもミッドレイヤーとしても使えるアイテムです。今回は「ソフトシェルとは」という定義から、ソフトシェルの選び方、おすすめのソフトシェルをまとめました。
ソフトシェルとは
ソフトシェルは登山・アウトドアウェアの中でも比較的新しいアイテムです。ハードシェルが雪山登山にも耐える堅牢さや防水性が高いのに対し、ソフトシェルはストレッチ性や通気性の高さが特徴です。
ソフトシェルの歴史を少し振り返ると、1990年代に初めてつくられたソフトシェルはフリースのような柔らかさと保温性を持ち、高いストレッチ性能を兼ね備えていましたが、防風性と耐水性はありませんでした。2000年代に入り、徐々に生地の改良が進み防風性と耐水性の改良が進んで現在に至ります。
ソフトシェルは気候が安定している海外の山であれば使いやすい一方、天候が変わりやすい日本の山では行動時間が長いほど完全防水が求められます。ソフトシェルのメリットデメリットを理解し、使いどころに注意しましょう。
ソフトシェルはざっくり以下の2タイプに分類されます。表地と裏地はそれぞれ繊維や加工、厚みが異なる様々なモデルが存在しているため、目的に合ったものの見極めが必要です。
②防風・撥水のための表地のシェル+防寒・保温のための裏地がついたタイプ
ソフトシェルのメリット
改めてここでソフトシェルのメリットとデメリットを整理します。まずは主なメリットを2点ご紹介。どのようなシーンで使うべきかを理解しましょう。
メリット①:ストレッチ性が高いため上半身や腕の動きが大きいスポーツやアウトドア活動に適している
登山道が整備されている場合はトレッキングポールを動かす腕もそこまでの動きはありませんが、急峻な斜面を登る場合やロッククライミング、アイスクライミング等の縦の動きが多い場合は上半身全体の動きも大きくなります。体にフィットしながらもストレッチ性が高いソフトシェルは様々な動きに対応してくれます。
メリット②:透湿性・通気性が高いため発汗量が多いスポーツや気候での着用に適している
ソフトシェルは完全防水ではない代わりに、高い撥水性と透湿性・通気性を持ちます。レインウェアやハードシェルの透湿性では追いつかないような発汗量が高い状況でもソフトシェルであればどんどん汗を外気に放出してくれます。気温が高かったり運動量が多いが少し肌寒いシーンも想定される場合はソフトシェルが活躍してくれます。
ソフトシェルのデメリット・注意点
次にデメリットと注意点を紹介します。弱点を理解し、使いどころを間違えないようにしましょう。
デメリット・注意点①:完全防水ではないため最初から雨が想定される場合は避けたい
ソフトシェルは小雨程度であれば雨を弾いてくれて雪が付着しにくい加工がされています。ただし、大雨が降った場合は完全に雨を防げません。日帰りの軽いハイキングやトレッキングなど、仮に雨で濡れてしまった場合でもすぐに下山可能な場合は大きな事故にはなりませんが、長時間行動する場合は特に注意が必要です。山の天気は変わりやすいので、雨の予報が出ていない場合でもレインウェアを持参しましょう。
完全防水ではありませんが、ソフトシェルはアウターとしても、中間着(ミッドレイヤー)としても使用可能な便利なウェアです。雨が降った場合はソフトシェルの上にそのままレインウェアやハードシェルを羽織ることを想定してそれぞれのウェアを選ぶのも選び方の一つのパターンです。
デメリット・注意点②:ハードシェルと比べると生地が薄く耐久性が低い。また機能的にも削られている場合が多い
透湿性や通気性を高めようとするとどうしても生地は薄くなり、耐久性が低くなります。ベンチレーションやウインドスカートが省略されていたり、ポケットも数が少なかったりシームテープがなかったりします。厳冬期など、保温性と耐久性、機能性が求められる場面ではハードシェルを着用しましょう。
防水加工と撥水加工の違い
ここで、「防水」と「撥水」の違いについて説明します。
防水性・防水加工とは
水を通さない生地の層をその他の張り合わせたり挟み込んで加工を施すことで防水性が生まれます。防水性をもった代表的な素材が「ゴアテックス」です。また、ゴアテックスだとしても生地のつなぎ目や裁縫部分は水がしみこんでくる可能性があります。ウェアのモデルにもよりますが、ジッパーや縫い目全体の裏側にシームテープが貼られているとより防水性が高まります。
ゴアテックスは生地自体が水を通さないので洗濯しても基本的に性能は落ちません。
撥水性・撥水加工とは
撥水性をもたせるための撥水加工とは、表面に水を弾くコーティングを施すことになります。水を弾いて玉状の水滴にすることでウェアに染み込む前に流れ落ちていきます。
洗濯や磨耗、紫外線等で劣化していくので撥水性が落ちた場合は市販のスプレーを使用してメンテナンスする必要があります。
ソフトシェルの活用シーン・選び方
使いどころが少し難しいソフトシェルについて、「こんな場合におすすめ」という利用シーンをまとめました。利用シーンごとに同じソフトシェルと言っても求められる性能が異なります。ポイントを押さえて目的に合った生地や加工のソフトシェルを選びましょう。
春秋のハイキング・トレッキング
明け方と夕方は肌寒いが日中は暑い。そんな時でも朝晩の寒さに耐える適度な防寒性と日中の行動中で大量に汗をかいても外に逃してくれる透湿性が高いソフトシェルを着用すると、ウェアの着脱の手間を少なくすることができます。
夏山登山・トレイルランニング
稜線に出ると強風が吹く場合があります。まともに風にさらされると体温が低下し、体力を奪われることも。そんな時は薄手のソフトシェル(ウインドシェル・ウインドブレーカー)を一枚もっておくと便利です。
スノーシュー・バックカントリー
スノーシューやバックカントリーではハイクアップする時と休憩や滑走時の寒暖差が大きいため、動きやすさと保温性、透湿性の全てが求められます。ソフトシェルとハードシェルの中間のような、耐水性と保温性が高いモデルがおすすめです。
スキー・スノーボード
スキーやスノーボードには防風性、保温性、ストレッチ性が高いソフトシェルが最適です。裏地も起毛など肌触りが暖かいものを選びましょう。
冬季のサイクリング・マウンテンバイク・ランニング
ウインドシェルのように防風性が高く、薄手で動きやすいソフトシェルがおすすめです。冷たい風をシャットアウトしてくれ、ストレッチ性が高いのでランニングの腕振りやサイクリングの姿勢でもウェアの突っ張りが気になりません。
クライミング・ボルダリング
クライミングの時は基本的に風が吹くと吹きさらしで寒いため、防風性が高くストレッチ性や多少岩肌にすれても大丈夫な耐摩耗性が高いソフトシェルがおすすめです。
おすすめのソフトシェルジャケット7選
(モンベル)mont-bell ノマドパーカ
モンベルのノマドパーカは防風性、透湿性、保温性のバランスが良く、春秋のハイキングやトレッキングにおすすめですが、他にも様々なシーンで使うことができるベーシックなソフトシェルです。オールシーズン使えます。冬季にミッドレイヤーとしてフードなしのノマドジャケットが使いやすいでしょう。
おすすめ利用シーン
春秋のハイキング・トレッキング
スノーシュー・バックカントリー
メンズ
レディース
ノマドジャケット
(マウンテンイクイップメント)MOUNTAIN EQUIPMENT (スコールフーデッドジャケット)Squall Hooded Jacket
スコールフーデッドジャケットはヘルメットにも対応のフードや、立体裁断、裾のドローコードなど一通り必要な機能が備わった使いやすいソフトシェルです。センターからずらしたオフセットセンターフロントジッパーは寒さ対策にも有効で、デザイン的にもよりカジュアルな雰囲気なので、普段着として街中でも着用できます。様々なシーンで使いやすいため、オールシーズン活躍してくれるソフトシェルです。
おすすめ利用シーン
春秋のハイキング・トレッキング
春先のバックカントリー
ロードバイク・サイクリング
メンズ
(モンベル)mont-bell ウルトラライトシェルジャケット
ウルトラライトシェルジャケットはなんと135gの超軽量で、Tシャツよりも軽い軽さを実現しています。表地は極薄ながら防風性が高い生地、裏地は汗がべたつかないメッシュ素材になっていて、全体的にストレッチ性が高いのもおすすめポイントです。脇部分がメッシュのベンチレーターになっていて熱と湿気を逃がす構造になっていて暑さ対策も万全です。
おすすめ利用シーン
夏山登山・トレイルランニング
冬季のサイクリング・マウンテンバイク・ランニング
メンズ
レディース
(モンベル)mont-bell パウダーシェッド パーカ
パウダーシェッドパーカは「クリマバリア」と呼ばれる、表地が防風性が高く、裏地が起毛で暖かく保温性が高い素材が使用されています。少し厚手のソフトシェルながら、立体裁断と生地そのものの伸縮性の高さにより動きやすさもキープ。ウインタースポーツに最適です。左袖にはスキー場のICチップを格納するポケットがついています。
おすすめ利用シーン
スキー・スノーボード
スノーシュー・バックカントリー
メンズ
レディース
(パタゴニア)patagonia レビテーション・フーディ
レビテーションフーディはクライミング時の岩肌との摩擦にも耐える耐久性を持ち、ヘルメット着用可能で視界を妨げない形状のフード、ハーネスの邪魔をしない位置に設置されたジッパー式ハンドウォーマーポケットなど、クライミングに必要な機能性を持ったソフトシェルです。登攀の激しい動きに対しても高いストレッチ性と透湿性でウェアが邪魔をしません。
おすすめ利用シーン
春秋のハイキング・トレッキング
クライミング・ボルダリング
メンズ
(ホグロフス)HAGLOFS (ボアフード)BOA HOOD
ホグロフス製のウェアは丁寧な縫製で質が高く人気です。ボアフードはソフトシェルとしてベーシックな防風性、透湿性、防寒性を持ちます。薄手でストレッチ製が高く、すっきりしたシルエットのため、中間着としても利用できます。袖口にはサムホールがついているので、手の甲まで寒さ対策できます。
おすすめ利用シーン
春夏秋のハイキング・トレッキング
サイクリング
メンズ
レディース
(マムート)MAMMUT (クルーズジャケット)CRUISE Jacket
おしゃれなデザイン性の高さが人気のマムート。クルーズジャケットは240gと軽量でポケッタブルの収納が可能なため、ハイキングやトレッキングから日常の普段着、旅行のいざという時のための上着としても使えます。
おすすめ利用シーン
春夏秋のハイキング・トレッキング
サイクリング
旅行
ランニング・ウォーキング
メンズ
レディース
ソフトシェルの使い道は様々。目的に応じて何枚あってもOK
登山用品の進歩によってソフトシェルとハードシェルの明確な境目は徐々になくなりつつもあります。「ソフトシェル」という名前がつくモデルにも様々な違いがあるため、目的に応じた機能性を確認の上購入しましょう。
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