テント泊は登山の醍醐味といっても過言であはりません。登山初心者の方も日帰り登山に慣れてきたら是非テント泊を経験してみてください。より一層登山の楽しみを味わうことができるでしょう。テントは安くない買い物で長い付き合いになる登山用品であるため、しっかりと理解した上で慎重に吟味して購入しましょう。
また、ぶっつけ本番で設営して「テントが設営できない」「想定しているより寒くて風邪を引いた」「結露で寝袋や装備がべちゃべちゃになった」などのアクシデントが発生しないように、購入したらまず近場の公園などで設営リハーサルと野宿体験を行ってみることをおすすめします。
今回は登山向けのテントについて、パーツの種類の説明や選び方から、張り方・設営方法や人気のおすすめテント比較についてまとめました。
登山テントを構成するパーツと選び方のポイント
まずは登山テントを構成するパーツについて、吊り下げ式・ダブルウォールの自立型のテントを用いて解説します。パーツの役割を正しく理解して選ぶときのチェックポイントとしましょう。
出典:MSR
①インナーテント
テントの本体部分になります。通気性が高いナイロンなどの素材が使われることが多く、夏用はインナーテントがほぼメッシュになっているモデルもあります。使う気候に合わせて購入するテントのメッシュ部分の面積を検討しましょう。ダブルウォールの場合、防水機能はフライシートに持たせインナーテントは通気性と軽さが重視されます。インナーテントがメッシュ場合も地面に近い部分は防水や泥の浸入を防ぐため通常の生地になっています。
②ポール
自立式テントの要のパーツです。カーボンやジュラルミンなどの軽量で丈夫な素材が使われます。テントを構成するパーツの中で最も破損しやすい部分なので取り扱いには注意が必要です。
③フック
吊り下げ式の場合、インナーテントのフックをポールに引っ掛けることで持ち上げて居住空間を作り出します。設営が簡単なメリットがあります。テントには吊り下げ式の他にインナーテントのスリーブにポールを通して全体でテンションを受けるスリーブ式とポールが内側にくるインナーポール式があります。スリーブ式は全体でテンションをかけるのでインナーテントへの負担が小さいメリット、インナーポール式は降雨時も中に入って濡れずに設営を進めることができるメリットがあります。
④ハブ
ポールが交差する部分になります。フックとしてインナーテントを持ち上げる役割を持つ形になっているものも多いです。
⑤グロメット
ポールの先端を差し込むパーツです。金属製の穴になっているものが一般的です。2つグロメットがついている場合は通常内側を利用し、外側はテントが凍って張りずらい時などに使用します。
⑥ドアパネル
ジッパーなどで開閉するモデルが一般的です。土や水の浸入を防ぐために地面からある程度の高さがあるところまで開くようになっています。ドアパネルは換気のためにメッシュが使われることが多いです。
ドアパネルは縦横の長い辺についているモデルと、短い辺についているモデルがあります。長い辺にドアパネルがついているモデルは通気性が高く出入りしやすいメリットがあり、短い辺にあるモデルは高地の狭い稜線や雪山で棚を作る場合などの狭い場所で横向きに出口を設置することができるメリット、強風の環境下で風下を出入口して風の影響を受けにくい設営がしやすいメリットがあります。
⑦ペグループ
テントの四隅のペグを通す部分です。ペグループを使ってしっかりテントを地面に固定することで強風にも耐えることができる空間になります。
⑧グランドシート
テントを直接地面に設営すると地面の石やとがった小枝があった場合に穴が開いてしまう可能性があります。テントを購入する場合はグランドシートが丈夫につくられているか、防水性能は十分かをチェックしましょう。生地は丈夫につくられている部分とはいえ、別売りのグランドシートを購入して下に敷くとテントが長く使用できて防水性能も向上します。
出典:MSR
⑨フライシート
インナーテントにかぶせて使います。主に防水の役割があります。登山に使うテントは急な悪天候にも耐えられる生地と縫い目にも止水テープが使われています。外気と内部の温度差が発生する場所になるので内側に結露が発生する場所となります。
⑩前室
ドアパネルの前のインナーテントとフライシートの間にできる空間です。登山靴を置いたり調理場所として使ったりします。前室が広いと椅子やテーブルを置いてそこで食事ができたりもするので快適に過ごすことができます。
⑪ベンチレーター
テントについている換気のためのベンチレーターは雨が降っても入り込まないような形状になっています。フライシートのみにベンチレーターがついているモデル、インナーテントとフライシート両方にベンチレーターがついているモデルなどのバリエーションがあります。
⑫張り綱
フライシートにテンションをかけて耐風性能を上げるために使用します。テントがたるんでいると風の影響を受けやすいため張り綱でしっかりテンションをかけましょう。
登山テントの種類と選び方のポイント
登山用テントの種類は「自立型」「非自立型」と、「シングルウォール」「ダブルウォール」の大きく2つの要素によって種類が分けられます。どのタイプが自分の想定している使い方に近いか正しく理解しましょう。
自立・非自立の特徴
自立型
インナーテントにポールを使って立ち上げる形式です。グロメットに差し込んでペグダウンすることなくテンションをかけることができます。ペグダウンが必要ないため、地面が岩だらけの高山や狭い場所でも設営できるメリットがあります。
非自立型
インナーテントとポールだけでは自立せず、空間をつくるためにはペグダウンする必要がある形式です。しっかりペグダウンすると自立型と比較して耐風性が高いメリットがあります。
シングルウォール・ダブルウォールの特徴
シングルウォール
インナーテントとフライシートが1枚(外と中を隔てる壁が1枚)のテントをシングルウォールと呼びます。内部の湿度を外に出して、外部の雨から守るために透湿防水性能を持つ生地が使われます。雨が降ると中に水が入りやすかったり結露しやすかったりするデメリットがありますが、ダブルウォールと比較して軽量になるメリットがあります。
ダブルウォール
通気性能を持つインナーテントと防水性能を持つフライシートの2枚セットになったテントをダブルウォールと呼びます。シングルウォールと比較して重量が重いのがデメリットになりますが、居住性や快適性が高いのがメリットです。初心者にはダブルウォールがおすすめです。
「自立・非自立」と「シングルウォール・ダブルウォール」の組み合わせまとめ
シングルウォール | ダブルウォール | |
自立 | 雨が多い春から秋は使いにくいが、荷物が多くなるためなるべく軽量化を図りたい冬の雪山で利用されることが多い。 | 初心者向きの組み合わせ。重量は重たくなるが最も快適に過ごすことができる。どのような場所でも設営しやすく、雨が降っても防水性が高く前室などの居住性も高いため快適に過ごすことができる。 |
非自立 | ポールと生地が少ない分最も軽量化できる組み合わせ。風にも強いため、スノーアンカーやペグで固定できる環境であれば自立型よりも有利。 | 側面はテンションをかけるために引っ張られるため空間が広い。自立型に比べて軽量化できて風にも強い。ペグダウンできる環境が必要になるため、高地など岩場が多い場所では使いづらい。 |
3シーズン用・4シーズン用
登山用のテントには春夏秋の3シーズン用と冬も使える4シーズン用が存在します。4シーズン用は雪山の使用に耐えるため生地が厚く、通気性よりも密閉性を重視して保温性を高めているため、夏山で使うには重くて暑い装備となります。逆に3シーズン用は密閉性が不足しているため吹雪で寒気が入り込むため十分な保温ができません。雪山に行く場合は夏用とは別にテントが必要です。
登山テントの張り方・設営方法
①設営場所を決める。設営場所のポイントは、平らな場所で雨が降った場合に浸水の可能性がある窪地や沢など水から離れた場所にしましょう。
②設営場所を決めたら、小石や小枝などを取り除く
③グランドシート、インナーテントを敷く
④ポールの骨組みをつなげて四隅のグロメットに差し込む
⑤インナーテントをフックに吊るす
⑥フライシートをインナーテントの上からかぶせて四隅をインナーテントに連結する
⑦ペグでテントを固定する
登山テントの張り方・設営方法はこちらの動画で3分で理解できます。
1人用の人気のおすすめ登山テント比較3選
第1位:アライテント(ARAI TENT) トレックライズ0(TREK RAIZ0)
一人用のテントでおすすめランキング第1位はアライテントのトレックライズ0です。重量は1,250gでダブルウォール、ポールは自立型のスリーブ式です。
発売から20年近く経ってもまだまだ人気の定番モデルです。ドアパネルの開口部分が大きいため開放感が高く、前面のフライシートは地面ぎりぎりまで生地があるため、雨が降っても跳ね返りを最小限まで防いでくれます。居住空間は最低限ですが、とにかく軽量コンパクトに持ち運べるテントを探している人におすすめです。
第2位:Eureka(ヨーレイカ) テント アマリパス ソロ
一人用のテントでおすすめランキング第2位はヨーレイカのアマリパスソロです。重量は1,700gでダブルウォール、ポールは自立型の吊り下げ式です。
インナーテントはメッシュの部分が大きくなっていて、フライシート後方のベンチレーターからしっかりと湿気を排出できるため夏でも通気性が高く快適に過ごすことができます。前室がかなり長く取られているため空間を広く使うことができます。値段も安くて手頃なため人気が高いモデルです。通気性が高いので寒い時期の使用は寒さに注意が必要です。
第3位:モンベル(mont-bell) ムーンライトテント1型
一人用のテントでおすすめランキング第3位はモンベルのムーンライトテント1型です。名前の由来は、月明かりの下でも設営できるという意味が込められています。重量は2,100gでダブルウォール、ポールは自立型の吊り下げ式です。
名前の通り、設営が非常に楽で丈夫なテントであることが持ち味な反面、一人用テントとしては多少重量が重たいデメリットもあります。オプションで専用のグラウンドシートも購入することができるので、長く使えるテントです。
2人用の人気のおすすめ登山テント比較3選
第1位:MSR エリクサー2
2人用のテントでおすすめランキング第1位はMSRのエリクサー2です。重量は2,120gでダブルウォール、ポールは自立型の吊り下げ式です。
なんといってもMSRのテントはかっこいいことで人気です。色分けされたボールや各パーツで間違うことなく設営することができ、独特の2本のクロスするメインポールは側面と天井に広い空間を作ってくれます。長辺の前後に前室と出入り口があるため収納力や通気性も高く、フライシートにはキックスタンド式でしっかりと開口できるベンチレーションがついています。前室にはレインガーター(雨どい)がついているため、流れてきた水滴が出入り口に垂れないように工夫されています。ゆったりと快適にテントの中で過ごしたい人におすすめです。
第2位:プロモンテ(PUROMONTE) VL26
2人用のテントでおすすめランキング第2位はプロモンテのVL26です。重量は1,360gでダブルウォール、ポールは自立型の吊り下げ式です。
プロモンテは国産メーカーでかなり軽量でコンパクトにたためる点と、長辺が出入り口になっているため前室がかなり広く、出入り口のジッパーも直線で使い勝手が良いため人気が高いです。素材にポリエステルが使われており、ナイロン製のテントよりも速乾性が高くなっています。降雨時や朝露で濡れた場合も早く乾いて格納できるメリットがあります。軽量化を追求したい人におすすめのテントです。
第3位:アライテント(ARAI TENT) エアライズ2(AIR RAIZ2)
2人用のテントでおすすめランキング第3位はアライテントのエアライズ2です。重量は1,550gでダブルウォール、ポールは自立型のスリーブ式です。
エアライズ2もどこにいっても見かけるであろう登山用テントの大定番です。1,550gとこちらも軽量で持ち運びやすい重さです。短辺が出入り口になっていて、長辺の1つに虫除けメッシュ付きのベンチレーターがついています。
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