雪山登山やバックカントリースキーに欠かせない登山用品がスノーショベルです。本記事ではスノーショベルとは、スノーショベルの選び方、使い方、おすすめモデルを解説します。
スノーショベルとは
雪山登山やバックカントリースキーに欠かせない登山用品がスノーショベルです。雪山登山では主にテント設営時の除雪や地面の整地に使います。また、トイレのスペースを掘ったりブロックでテーブルを作ったりすることもできます。
もしスノーショベルを持っていないとピッケルやトレッキングポールなど他の道具を使っても雪を掘ったりブロックを切り出したりすることは不可能です。スノーショベルはテント泊の雪山登山では必須と言えます。
もう一つの主な使い方は雪崩対策です。スノーショベルがないと掘り起こすことは確実に不可能なので登山やバックカントリースキーで新雪が積もっている雪山に入るときは必ず携行しましょう。
一昔前は工事現場や農作業で使うような重たいショベルであったためグループで数本持つ形をとっていましたが、現代は軽量素材の開発が進んでいるため一人一本が基本です。
スノーショベルの基礎知識
部位の名称 | 説明 |
---|---|
①トップ | ブレードの先端部分で雪面に差し込む部分。尖らせると差し込みやすいがザックに収納する時に収納効率が下がる。 |
②ブレード | 金属製が主流だがプラスチック製も存在。ブレードの大小で収納効率と作業効率が変わってくる。 |
③シャフト | 長さや形状によって作業効率が変わる。雪山登山用のスノーショベルはシャフト取り外し可能モデルが多い。 |
④グリップ | TグリップとDグリップの2種類。携行性と作業効率が変わってくる。 |
スノーショベルの選び方
選び方①:トップの形状
トップの形状については、先が細くとがっている形状のほうが雪面に突き刺しやすいので作業効率は上がります。逆にフラットなものはブロックを作る場合や雪洞の壁や天井を削って成型する時にフラットにしやすいメリットがあります。雪山ではどちらかというとフラット気味のトップのほうが扱いやすい場面が多いです。
選び方②:ブレードの素材
ブレードの素材はアルミのような金属とポリカーボネートのようなプラスチック製の2種類が存在します。金属製が600g~800gのものが多いのに対し、プラスチック製は400g~600gと明らかに軽量になりますが、その分堅牢度に欠けるため、固い雪や氷には歯が立ちません。
ある程度の重さは本来のスノーショベルの役割のためと割り切って、金属製を選ぶほうが様々な状況に対応できます。
選び方③:ブレードの形状
ブレード全体が湾曲気味なショベルとフラット気味なショベルが各ブランド様々発売されていますが、雪山登山で使いやすいのは基本的にフラット気味のタイプです。
大きな理由はブロックの切り出し作業の使いやすさです。ブレードが湾曲しているとうまく立方体のブロックを成形できないので時間がかかります。またテント場の地ならしもきれいなフラット状態を作りにくいのでこれも時間がかかるでしょう。
また、ピットチェック(雪面から雪柱を切り出して上から圧力をかけて雪崩が起きやすい状態かどうかをチェックする手法)の際も同じようにフラット気味のほうがうまく雪柱を切り出しやすくなります。
選び方④:グリップの形状
グリップにはTグリップとDグリップの2種類が主流です。軽量・コンパクトを求める場合はTグリップ、使いやすさを求める場合はDグリップになります。
Tグリップ | Dグリップ | |
---|---|---|
見た目 | ||
特徴 | コンパクトでパッキングしやすく、軽量。リュックの外に装着する場合はピッケルと同様に装着できる。(Dグリップだとザックの形状によっては大きくはみ出して、引っかかりやすく危険な場合もある) | 握りやすいので長時間の作業でもTグリップと比べて楽。下からすくっても上から削っても使いやすい。指がつながっているグローブ(ミトングローブ)でも使用可能。 |
選び方⑤:シャフトの長さ
シャフトが短いと収納性が良くなりますが立って作業する時に腰が痛くなりやすいデメリットがあります。基本は立って作業することが多いので、どうしてもコンパクトに抑えないといけない場合を除くと、平常時はシャフトが長く調節できるスノーショベルのほうが作業が楽で使い勝手がよいです。
雪洞を掘る場合など取り回ししずらい場面ではシャフトが短いほうが使いやすいので、2段階で長さ調節可能なモデルなどを購入しておくと便利でしょう。
選び方⑥:収納性
スノーショベルはそのままの形状だとかさばってしまうのでシャフト部分が取り外し可能モデルが多いです。基本的には取り外しモデルが便利ですが、シャフト取り外し不可の一体型は雪崩が起きた場合に1秒でも早く対応可能になるメリットがあります。
上記のシャフトの長さも収納性に直接影響があるので、短いほうが収納面では有利ですが腰が痛くなるので伸縮してなるべく長くなるモデルがおすすめです。
スノーショベルの使い方
テント場の整地
基本はこの使い方が一番多くなります。テント場にまずはテントを設営できるだけの平面をつくり、踏み固めた後に平らに慣らすためにはスノーショベルが欠かせません。
整地した後に竹ペグを埋め込んだり掘り起こしたり、テントの外張り部分に雪をかぶせる作業やテーブルを成形するためにも使います。
風防のためのブロック作り
雪山の天候は非常に変わりやすいため、テント設営の際は風対策を頭に入れておく必要があります。たとえテントを設営する時間帯に風が吹いていなくても、テントを張った場所が風よけの樹木などがない場合は風防のブロックで囲んでおく必要があります。既に風が吹いている場合はテント設営の前に風防ブロックを積み上げておきましょう。
雪洞作り
緊急事態で雪洞でビバークする必要が出てきた場合はスノーショベルがないと雪洞を掘ることができません。万が一に備えて雪山にはスノーショベルを持参しましょう。
雪崩による遭難者の掘り起こし
雪山登山やバックカントリーでもし雪崩が発生してグループが巻き込まれて完全に埋まってしまった場合、スノーショベルがないと間違いなく掘り起こすことは不可能です。
つまり、グループで数本持っていくのではなく一人ひとりが携行しておくことが重要です。
レスキューそりに素早く変更可能
スキー板と組み合わせてソリを作ることができるモデルもあります。
Tグリップのおすすめスノーショベル
ブランド | モデル | 重量 | ブレードサイズ (cm) | 全長 (cm) |
---|---|---|---|---|
ピープス | ショベル・ツアー | 500 | 22×35 | 68 |
モンベル | コンパクトスノーショベル | 525 | 21×27 | 66 |
ブラックダイヤモンド | ディプロイ3 | 565 | - | 63 |
MSR | レスポンダーTショベル | 624 | 22×24.5 | 81 |
G3 | スペードテックショベル | 630 | 20.5×25 | 79 |
K2 | レスキューショベルプラスアイスアックス | 670 | 25×28 | 85 |
【ピープス】ショベル・ツアー
グリップの部分が丸みがあるためグローブをはめたままでも握りやすくなっています。ピープスのロゴが大きくデザインされたブレードが特徴的。軽量でエントリーユーザー向き。
【モンベル】コンパクトスノーショベル
シャフトとブレードには軽量性と強度を両立させたアルミ合金を使用。シャフトは力が入りやすい直方体の形状で2段階で長さ調節も可能。これだけの機能で値段も安いので初心者におすすめ。
【ブラックダイヤモンド】ディプロイ3
シャフトのストッパーを押し込むだけで収納モードと使用モードに伸縮可能なワンタッチタイプ。手間がかからないので人気があります。
【MSR】レスポンダーTショベル
ブレードは比較的小型で収納しやすく、シャフトが2段階に長さ調節可能で最大81cmになるので腰に優しいスノーショベルです。
【G3】スペードテックショベル
少し硬めの雪や氷でもしっかりと刺さることを目的として、剣先のように先が尖り気味に加工されたモデルです。シャフトは2段階に調節可能。
【K2】レスキューショベルプラスアイスアックス
スノーショベルとしてもピッケルとしても使えるモデル。こちらはレスキュー用のソリとしても使えるパーツが付属します。
Dグリップのおすすめスノーショベル
ブランド | モデル | 重量 | ブレードサイズ (cm) | 全長 (cm) |
---|---|---|---|---|
MSR | オペレーターDショベル | 710 | 25×27.3 | 88 |
モンベル | アルパインスノーショベル | 720 | 26×31 | 83 |
ブラックダイヤモンド | エバック7 | 794 | - | 94 |
【MSR】オペレーターDショベル
ブレードはフラットで大きめなので作業効率が非常に高いスノーショベル。トップがのこぎり状になっていてフラット気味のトップながら雪に食い込みやすい形状です。
【モンベル】アルパインスノーショベル
Tグリップのコンパクトスノーショベルと比べて一回りブレードが大きいモデル。値段も安いのでDグリップを探しているエントリーユーザーにおすすめ。
【ブラックダイヤモンド】エバック7
最大の特徴はブレードを逆に差し替えることで鍬としても使える点。ワイドで足で踏み込んで使いやすい形状なので作業効率が高いスノーショベルです。