走ったり自転車に乗ったまま水分補給できる便利なアイテムがハイドレーションシステムです。今回はハイドレーションパックの使い方や中身の洗い方や手入れの仕方からおすすめのパックやチューブ等周辺アイテムを紹介します。
ハイドレーションとは
ハイドレーションパック対応のバックパックであれば、ハイドレーションシステムを収納するための専用のスペースがあります。ランニング、ジョギング、トレイルラン等の休憩する暇がないスポーツの場合や、登山やトレッキングでも水筒を出し入れする手間を省きたい人におすすめ。
最初にハイドレーションパックはアメリカのキャメルバック社で1988年に開発されました。長距離の自転車ロードレースで脱水症状を防ぐために輸血バッグと手術用のバッグをウェアに縫い付けて水分補給をしたのがきっかけです。
現在では登山や自転車などスポーツだけでなく、軍隊や警察などでもハイドレーションシステムが使用されています。サバゲーでもお馴染みですね。
ハイドレーションシステムの特徴は簡単に給水できてフィルム状のソフトキャリーは1Lでも30gを切る軽さで使わない時はくるっと丸めてコンパクトに携行できることです。
この基本性能に加えて現在ではワイン専用のハイドレーションパックや雑菌の繁殖を防ぐ機能を持つハイドレーションシステム、残量表示機能や岩場で引きずっても破れない高耐久性ハイドレーションパックなど、多機能・高機能化が進んでいます。
ハイドレーションの使い方の注意点・ポイント
注水時は特に破れやすいので取り扱いに注意する
フィルム状のソフトボトルは通常の水筒と比べてもちろん破れやすいので取り扱いには注意してください。
例えばザックの中で一緒に入れている登山用品の尖った部分と当たったり、ザックの外側に入れて岩肌の鋭利な部分に当たった時に圧力がかかると破れてしまう恐れもあります。
特に水を入れた状態は破れやすく、破れた場合にザックの中が水浸しになってしまうので取り扱い注意です。
収納時は折りたたまずに丸める
水を飲みきってハイドレーションを収納する場合は必ず丸めて収納するようにしてください。折りたたんで折り目をつけると折り目の部分がシワになり水漏れの原因になる可能性があります。劣化が早まるので折りたたみは厳禁です。
ハイドレーション対応ザックを使うと収納が便利に
ハイドレーション対応ザックはこのようにハイドレーション専用の収納エリアがあります。上記のザックの場合は背面と収納エリアの間に差し込むことができるため、パッキングの邪魔をせずチューブの取り回しも非常に簡単にできます。ハイドレーションの使用を考えている場合はザック選びもハイドレーションに合わせると便利に使うことができます。
関連記事:登山リュックの選び方
冷凍しても使える
冷凍はフィルム状のハイドレーションならではの使い方です。保冷性能が全くないので基本は常温の水の給水しかできませんが、夏は冷凍庫で凍らせると冷たい水を飲むことができます。
冷凍させる時は水を満タンに入れると膨張してハイドレーションが破れる可能性があるので半分から7〜8割程度にしておきます。完全に凍ったら出発直前に水を追加して満タンにしてください。
外せるモデルはチューブ・ホースの部分を外して冷凍してください。ゴムの部分は冷凍すると硬化して弾力がなくなり、劣化する可能性があります。
冬季はチューブ・ホースの部分が凍結しやすい
雪山などでハイドレーションを使用しているとチューブ・ホースの部分が徐々に凍ってくるため、定期的に水を流す必要があります。
飲み方のコツは、飲んだ後に水をチューブ内に残さないこと。吸い上げた後にチューブに残った水をハイドレーションに吐き戻すと凍結を抑えることができます。(唾液が入る可能性があるので生理的に好きではない人もいるかもしれません。)
また、断熱加工されたチューブを使用するか断熱材を自作してチューブに巻くことで凍結を抑えることができます。
このような対策をしたとしても気温によっては凍ってしまうこともありますし、そもそも保温性能が低いハイドレーションに入れた水は0℃に近い冷たさになっていることもあります。
冷たい水を飲むと体力を消耗するのでハイドレーションはあまりおすすめではなく、冬季の雪山登山では山専ボトルのような保温性が高い水筒がおすすめです。
ハイドレーションの中身にスポーツドリンクはおすすめしない
ハイドレーションの最大のボトルネックは非常に洗浄しずらいこと。湿気がとれるのに時間がかかり、ただでさえカビやすい環境です。
また、ペットボトルやハイドレーションは直接口をつけて飲むため、どうしても残ったドリンクに唾液が混じります。これだけ雑菌の繁殖は始まるので、雑菌にとっても栄養が豊富なスポーツドリンクは雑菌の繁殖とカビが余計に発生しやすい環境です。
買ったハイドレーションを長く使いたい場合は中身にスポーツドリンクを入れることは避けたほうがよいです。
ハイドレーションの洗い方・手入れ
ハイドレーションの使用後は必ず洗浄してください。そのまま放置しているとカビの原因になります。
広口のハイドレーションパックを使用すると掃除しやすいですがそれでも底のほうが手が届きにくく手入れが難しいです。
熱湯で殺菌すると隅々まできれいになりますが、製品によって耐熱温度が異なるので購入した製品の説明書をよく読んでください。
どのハイドレーションシステムでも手入れが捗るアイテムがハイドレーション専用の掃除用ブラシです。
本体用ブラシとチューブ・ホース用ブラシのセットになっているものがおすすめです。中性洗剤とお湯を使って洗い、最後は水(お湯)でよくすすいでください。お湯で流したほうが乾燥が少し早くなります。
内部を洗浄するタブレットも販売されているので、汚れや臭いが気になる人はこちらを合わせて使いましょう。
ハイドレーションの洗い方の参考動画
ハイドレーションの洗い方の紹介動画です。動画で説明されているように、乾燥させる際はキッチンペーパーなどを細長くしてハイドレーションの内部に差し込んでおくと早く乾燥します。
ポイントはキッチンペーパーを完全に中に入れてしまわず、一部を必ず外に出しておくこと。通常ハイドレーションの中で蒸発した水分は口が細いほど外に逃げずらいため乾燥に時間がかかります。キッチンペーパーを差し込むと、湿気を吸い上げて外側に逃がしやすくするため内部乾燥のスピードが上がるという仕組みです。
おすすめのハイドレーション比較
CAMELBAK(キャメルバック) クラックスリザーバー 2.0L
ハイドレーションの元祖キャメルバック。アンチドートリザーバーが更に進化したモデルです。広口で水を入れたり洗ったりしやすく、乾燥用のアーム、膨らみを抑えて収納しやすさを向上させる仕組み、水漏れ防止装置、ワンタッチチューブ脱着機能など細かい機能が満載です。
パックとチューブには銀イオンが練りこまれていて雑菌の繁殖を抑えます。軽い力で吸って水が飲めるので、息が上がっているときでもしんどくありません。
また、破れやすいハイドレーションは耐久性が気になりますが、なんと破れに関する破損は永久保証(!)されているのでカビさえ気を付ければかなり長く使えます。
Platypus(プラティパス) ホーサー
プラティパスのホーサーは破れにくく耐久性が高いと評判で、シンプルで使いやすいモデルです。シンプルが故に軽い点がとにかくおすすめポイントです。吊したり固定するのに便利な穴が上部に空いています。別売りのキャップを購入するとソフトタイプの水筒としても使用できます。
DEUTER(ドイター) ストリーマー
ドイターのストリーマーです。こちらのハイドレーションもシンプルな構造で耐久性の評判も上々な商品です。ロードバイクの方にも人気です。
OSPREY(オスプレー) レザヴォア
オスプレーのレザヴォアです。キャップやハンドルを小型化しており、ハイテク機構の割に軽量化されています。バイトバルブ(飲み口)をマグネットをチェスとストラップに取り付ける事でカチっと止まるので行動中もホースの固定が楽で、ワンタッチでホースを脱着することができます。
旧モデルは水の注ぎ口・洗浄口がキャップ式でなかなか狭かったのですが、新モデルは上部がジッパーのようになっていて全部開く形式になったので手を入れて洗いやすくなっています。
もちろんですが、オスプレーのザックと形の相性がいいのでオスプレーザックの人におすすめ。
新モデル
[サロモン] ハイドレーションパック SOFT RESERVOIR 1.56l
サロモンのハイドレーションパックはトレイルランニング用などの小型バックパックにも収納しやすく、走っていても左右の水の揺れが気にならない細身のシルエットです。こちらのモデルのような注水口の場合、洗浄する際は裏返しにして洗えるので利便性も高いです。
GEIGERRIG(ガイガーリグ) HYDRATION ENGINES(ハイドレーションエンジン)
ガイガーリグのハイドレーションエンジンはポンプで加圧してチューブの先端をつまむことで水を噴射することができます。口をつけずに水を出すことができるので唾液の混入による雑菌の繁殖を防ぎます。複数人でシェアしたり、顔を洗ったり傷口の洗浄をしたりとアウトドアで様々な使い方ができます。
MSR ドロムライト4.0L
新しくなったMSRのドロムライト。はMSR独自の3in1キャップが更に進化して、水を溜める、注ぐ、飲む動作がよりスムーズにできるようになっています。
また、耐久性が非常に高いので、本来ハイドレーションでは厳禁の折りたたんでコンパクトにすることが公式でOKとされています。
エバニュー(EVERNEW) ウォーターキャリー&ハイドレーションチューブ
エバニューのハイドレーションシステムはそれぞれ別売りのソフトタイプの水筒とハイドレーションチューブを組み合わせて使います。チューブは市販のペットボトルにも使えるので値段も安く汎用性の高さがおすすめです。
ボトル式おすすめのハイドレーション
フィルム状のソフトパッケージとホースの形状だけがハイドレーションではありません。給水に便利な機能を持つものもハイドレーションと言います。ボトル式のハイドレーションはロードバイクなどの長距離自転車走行やマラソンやジョギングなどランニングに最適です。
[サロモン] ハイドレーションパック SOFT FLASK 150ml
150mlと小型でウィダーインゼリーのパッケージのようにぎゅっと握ることで中身を飲むことができます。マラソンなどの補給でshotzなどエナジージェルをパッケージのまま飲む場合、全部飲みきらないと捨てられないしべたべたします。こちらのハイドレーションパックを使うと小分けにして細かく補給をとることができます。
Hydrapak(ハイドラパック)ULTRAFLASK(ウルトラフラスク) 450ml
ハイドラパックのウルトラフラスクもサロモン同様に握るだけで給水できます。450mlと600mlの2種類でサイズ的には水やスポーツドリンクに適しています。チューブを取り付けて長い飲み口とチューブを外してバルブのみの短い飲み口の2wayで使用できます。
CAMELBAK(キャメルバック) ポディウムチル
軽く握るだけで水分補給できることを突き詰めてつくられたハイドレーションボトルです。自転車用のハイドレーションとして最適です。
ハイドレーションの周辺アイテム
市販のペットボトルに使えるハイドレーションチューブ・ホース
チューブだけも購入することができるので市販のペットボトルをハイドレーションとして使うこともできます。登山やトレッキングではザック左右のホルダーにペットボトルを差し込んで使うこともできますが難点は飲む量によって左右のバランスが変わってくる点です。
ハイドレーションの保冷・保温カバー
ハイドレーションを凍らせた時にカバーを使うと保冷と結露で周囲が濡れることを防いでくれます。
ハイドレーションホースを胸元で固定するクリップ
登山でもトレイルランニングでもホースを固定するとハイドレーションが格段に使いやすくなります。固定用のクリップは是非合わせて購入することをおすすめします。
ハイドレーションは水筒やタンクとしても使える
ハイドレーションはノンストップで水分補給できるだけでなく、通常のキャップをつけてソフトボトルの水筒や料理用の水を運ぶタンクとしても使えます。是非一度使ってみてください。登山専門店の好日山荘webショップではキャップやバルブなど周辺アイテムも豊富に取り揃えられているので一度チェックしてみてください。
登山用の水筒について知りたい人はこちらの記事を参考にしてください。
夏はハイドレーション、冬は山専ボトル。