登山の服装は重ね着(レイヤリング)が基本です。登山のフリースはレイヤリングの中ではミドルレイヤーとして着用されます。今回は登山用のフリースの選び方や、ユニクロのフリースでもいいのか?と疑問の回答、おすすめのフリース4選についてまとめました。
極薄フリースで持ち運びにも便利。普段使いユーザーも多いバーサマイクロジャケット
フリースとは
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フリースとは、起毛加工された繊維を総称したものであり、特定の化学繊維を指す言葉ではありません。フリースは起毛した繊維であるため、軽くて保温性が高いメリットがある反面、その分体積がかさばってしまうデメリットがあります。また、熱に弱いという弱点があり、タバコなどの火が触れるとすぐに穴が開いてしまいます。
最近は防風性や耐火性を向上させた生地や、起毛の繊維を短くすることでかさばりを抑えたマイクロフリースのような生地や、ストレッチ性を向上させた生地など、機能性のフリースが増えてきています。
登山でのフリースの役割
登山においてフリースはレイヤリングの中ではミドルレイヤーとして主に空気の温かい層を作り出して保温すること、アンダーウェア(ベースレイヤー)が吸収した湿気を通気させて発散することにあります。
「フリースを着用するのは冬の雪山や富士山登山の防寒のため」という話は半分は正しいですが、状況によっては透湿性を優先したり、より高い保温性を優先したほうが快適な場面もあります。このように、状況に応じてフリースを含む適切なミドルウェアを選択することが重要です。
ミドルウェアの詳細は登山の服装の基礎知識を参考にしてください。
フリースは収納がかさばる難点があり、着用しない時は登山リュックの中で無駄にスペースをとってしまいます。そこで、最近は保温性が高くコンパクトに収納が可能なインナーダウンの人気が高まっています。しかし、ミドルウェアの中でもフリースは保温性と透湿性のバランスが良く、ストレッチ性が高く動きやすいため、行動中から山小屋や下山した後の着用まで幅広く使えるメリットがあります。
超薄手のフリースはかさばりが小さく、シャツのような感覚で使えてシャツよりもずっと温かいため、フリースの肌触りが好きでコンパクトな収納を求めている人に人気があります。
登山用フリースの選び方
登山用のフリースの選び方のポイントを以下にまとめました。山登りの際、フリースはミドルウェアにあたり、フリースの選び方はミドルウェアの選び方+フリース独自の特徴をふまえた選び方を理解することが必要です。
保温性
ミドルウェア全般に言えることですが、あまり厚すぎるウェアを選ばないこと(薄手のウェアを選ぶこと)がポイントです。登山の服装はレイヤリングによって体温を調整することで、行動中に快適なウェア着用枚数の状態があることが重要です。
暑すぎるから脱ぐと今度は寒い、といった状態はうまくレイヤリングができていない状態です。1枚の服が厚すぎると小刻みに体温調整できなくなってしまうため、フリースを選ぶ場合は薄手を選ぶと使い勝手がよいでしょう。フリースの中でも起毛が短く抑えられたマイクロフリースは生地が薄手で適度な保温力でかさばらないため登山に適しています。
また、弱点である防風性について、表生地にウインドブロック(防風)加工されているフリースも存在します。
動きやすさ・快適性
フリースは基本的にストレッチ性が高い素材ですが、立体裁断加工や、縫い目が工夫されて締め付けや不快感を減らしたフリースは行動中のストレスが少なくなります。また、湿気を排出するベンチレーションや、サムホール(親指を通して簡易的に手のひらを温める機能)などで温度調整能力を向上させているフリースもあります。
動きやすさという観点でもあまり厚いフリースを選ぶことはおすすめできません。薄手を選びましょう。基本的にはレイヤリングでフリースの外にハードシェルなどのアウタージャケットを着用することになるため、厚手のフリースだと動きやすさが損なわれます。
登山のフリースはユニクロでも問題ないか
(出典:ユニクロ)
結論、「ケースバイケースだがおすすめしない」です。登山メーカーのフリースは生地の厚みでバリエーションが複数あるので保温性能の強弱を選択することができます。また、ミドルウェアとしての着用が最初から想定された縫製や立体裁断加工されているため、ジャストサイズで温かい空気が逃げにくく、重ね着しても動きやすい作りをしています。
ユニクロのフリースは普段着を想定した作りのため、少し大きめで重ね着しずらかったり裾や襟元や袖口から寒気が入りやすいので不快感が大きかったり、厚みも選択肢がないため適応できる気候条件が限られたりします。また、登山メーカーはあらかじめ通気性を念頭に製品開発しているの対し、ユニクロは日常使いの暖かさを第一にしているため、通気性や透湿性が劣ります。
細かい点をあげると、登山メーカーのフリースはジッパーを上まであげた時のあたりをソフトにする加工や、ハーネスを装着した時でもポケットが使えるように両再度のポケットが高い位置に設置されていたりと、ちょっとした加工の違いでずいぶん快適性が違います。
日帰りハイキング等であればユニクロフリースでも問題ない場合もありますが、冬山や寒暖差が激しいことが想定される場合や、降雨や降雪時など厳しいコンディションの場合は信頼性と快適性が高い登山メーカーのフリースをおすすめします。
比較項目 | 登山用フリース | ユニクロフリース |
---|---|---|
保温性 | 〇様々な厚さのフリースがある | △選択の幅が狭い |
通気性 | 〇素材の工夫 | ×保温性重視 |
立体裁断 | 〇動きやすさと暖かい空気を逃さない | ×低コストのためつくりが甘い |
袖や襟元 | 〇絞りがある等冷気が入り込まない工夫 | ×低コストのためつくりが甘い |
サイズ感 | 〇ジャストフィットで重ね着しやすい | ×重ね着しずらい |
登山用フリースのおすすめ4選
登山用のフリースのおすすめを4つ厳選しました。選んだ前提は、春から秋まで使える、使い回しがきいてコンパクトに収納できる比較的薄手のフリースです。登山用のフリースはどのメーカーも薄手から厚手まで様々なモデルがあるので、よりコンパクトで薄手のフリースが欲しい場合や厚手で保温力が高いフリースが欲しい場合も選択肢が充実しているので、ニーズに合わせて選ぶことができます。
第1位:(モンベル)mont-bell クリマプラス100 ジャケット
モンベルのフリースは薄い順番で「シャミース」「クリマプラス100」「クリマプラス200」「クリマエア」と4種類に分かれます。クリマプラス100は春夏秋の3シーズンを通じて使いやすい薄手のモデルです。使い回しがきくので、初心者の方やまず1着フリースを購入したいと思っている方におすすめです。モデル名のクリマプラスとは、保温性と透湿速乾性を高めた登山向きの素材です。親指を通して手の甲が温められるサムホールや、左胸と両再度のジッパー付きポケットなどディテールの機能性も十分で使い易いフリースです。シンプルでおしゃれなデザインでカラーバリエーションも豊富なので日常使いもできますし、モンベルのロゴが登山やトレッキングでは雰囲気を出してくれてより一層登山を楽しめるポイントにもなると思います。価格もそこまで高くないのでおすすめの一着です。
より高い保温性を求める方は少し厚手のクリマプラス200とクリマエアがおすすめです。
第2位:(モンベル)mont-bell シャミースジャケット
モンベルのシャミースジャケットはモデル名の「シャミース」という超極細繊維のマイクロファイバーでつくられたフリースです。モンベルのフリースの中で最も軽量(234g)で薄手のフリースで、とにかく薄手でコンパクトに収納できるフリースを探している人におすすめです。細かいポイントとしては、袖口の縫い目が螺旋状に加工されてストレッチ性を向上させています。モンベルのフリースは総じてコストパフォーマンスが高いので人気が高いです。
シャミースジャケットは以下の記事でレビューしています。
第3位:(パタゴニア)patagonia R2ジャケット
パタゴニアのフリースは薄手のものから順番に「R1」「R2」「R3」「R4」となり、R2は2番目に薄手のモデルです。素材は保温性、吸湿速乾性、軽量、コンパクト、ストレッチ性を高いレベルで実現しているポーラテック・サーマルが使用されており、腕の内側やと袖口、脇の下のラインにかけては通気性と動きやすさをより高めたポーラテック・パワー・グリッドが使用され、より快適性を高めています。なお、ポーラテック・パワー・グリッドはR1全体に使用されている素材になります。
ディテールは、上までジッパーをあげた時に顎にあたる感覚をソフトにするジッパーガレージ、腕のストレッチ性を向上させて捲り上げを楽にするスパイラルステッチ構造、登山リュックとの摩擦を防ぐ縫い目をずらした肩の縫製、ベンチレーターとハンドウォーマーの役割を果たすメッシュポケットなど、さすがパタゴニアのフリースといったこだわりの機能が満載です。
より薄手のタイプはR!です。R1は全体的にブロック状の素材のポーラテック・パワー・グリッドが使用されて動きやすさと通気性が高いモデルですフリースというよりジャージに近い見た目ですが、しっかり保温性も兼ね備えています。通気性や速乾性を重視する場合はR1がおすすめです。
第4位:(ザノースフェイス)THE NORTH FACE バーサシリーズ
ノースフェイスのフリースのバーサシリーズは薄手のものから順番に「バーサマイクロ」「バーサミッド」「バーサロフト」となります。バーサミッドは中間の厚さとなります。ノースフェイスのフリースはアウターと襟の後ろと袖口のボタン、ジッパーでアウターシェルと連結して同時に着たり脱いだりできるようになる「ZIP IN ZIP SYSTEM」を搭載しているので、フリースとアウターをノースフェイスでそろえると便利になります。
バーサマイクロ
より薄手のフリース、バーサマイクロも人気です。
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登山向けフリースを含む登山の服装の基礎知識についてはこちらの記事にまとめています。