天然のダウンは軽くて保温性が高く、コンパクトに収納できることがメリットであるため登山ウェアに限らず普段使いのダウンとしても元々人気が高い素材です。
登山においては雪山とはいえ行動中は汗をかきやすく、周囲の雪や雨が降ってくる場合などはウェアが濡れる可能性が多々あります。素材にもよりますが、冬の雪山でウェアが濡れてなかなか乾かない状況が続くと生死に関わる可能性もあります。
ダウンの欠点は雨や汗に濡れるとロフト(ダウンのふくらみ)が保つことができず断熱層である空気層が抜けてしまうことで保温性が大きく下がる点です。
それに対して化繊インサレーションは、雨や汗で濡れた場合でも速乾性が高いというメリットがあるため登山ウェアには適しているが、ダウンと比べると重くてかさばるというデメリットがありました。
しかし、アウトドアブランド各社の開発の進歩により、化繊インサレーションはどんどん軽くコンパクトに持ち運べるウェアが登場してきています。値段が安くて速乾性が高いメリットを高めつつ、パッキングにも便利な化繊インサレーションについて2017~2018のおすすめモデルを比較しました。
化繊インサレーションとは
「インサレーション」は日本語で「隔離」という意味になり、登山ウェアにおいては「中綿が入った防寒用のウェア」を意味します。厚みをもった中綿が暖かい空気を保持することで外の冷たい空気と「隔離」する層の役割を果たします。
また、「化繊」は「化学繊維」を略した単語であり、ポリエステルやポリプロピレン等を原料とした人工素材を指します。人工素材の化繊に対して天然素材が「ダウン」になります。化繊は保温性能や収納時の圧縮性が天然ダウンに劣ると言われてきましたが、近年の性能アップにより今一番人気のミドルウェアになっています。
化繊インサレーションを選ぶポイント
- 重ね着・パッキングしやすい薄手を選ぶ
- インサレーションの性能はフィルパワー(FP)
- 各ブランドによる素材の違いを理解する
重ね着しやすい薄手を選ぶ
登山の基本はレイヤリングです。化繊インサレーションは基本的にミドルレイヤーと呼ばれてアンダーウェアとアウタージャケットの間に着用して保温層の役割を果たします。
ポイントは化繊インサレーションをアウタージャケット前提で着用しないことです。アウタージャケットは防風性、防水性、耐摩耗性など(状況によりますが)高い耐久性が必要になります。特に秋冬は外の冷気を遮断する断熱性が求められます。
化繊インサレーションやダウン、フリースは元々保温が得意なウェアであり、ウェアによってはゴアテックスなど防水性が高い生地を表面に使って本格的にアウターとして使えるモデルもありますが、ハードシェルほど高い耐久性はありません。
また、インサレーションを着たまま行動すると、おそらく暑くて汗をかきすぎるコンディションがほとんどかと思います。つまり、化繊インシュレーションはハイクアップが続く場所ではなく、休憩時や強風で平坦な稜線やハイキングなど行動量が少ない時に着るウェアであるため、そもそもスタート時点では登山リュックの中にパッキングした状態になります。
よって、登山の化繊インサレーションはパッキングの時に邪魔にならない程度の体積かつ休憩時の上着として着たりアウタージャケットの中に着たりできる薄手のインナーダウンと呼ばれるようなものを選ぶと使い勝手がよいということです。
インサレーションの性能はフィルパワー(FP)
インサレーションの品質を示すのが「フィルパワー(FP)」という数値で、一定の条件下で圧縮したインサレーションがどの程度のふくらみまで戻るかを数値化したものになります。
高ければ高いほど復元力が強くその分同じ重量で空気を多く含むことができる良質なインサレーションであることになります。
ただし、フィルパワーが同じでもインサレーションの厚さ厚いほうがもちろん保温力が高いのでフィルパワー+重量で見ることも選び方のポイントです。
各ブランドによる素材の違いを理解する
各ブランドの化繊インサレーションの中に使われて言う中綿の素材の特徴をまとめました。基本的に天然ダウンのような軽くて保温力が高いメリットと化繊の水に強い性能を持っていますが、各社で少しずつ方向性が異なる素材が開発されています。
ブランド | 素材名 | 特徴 |
---|---|---|
モンベル | エクセルロフト | 太さが異なる3種類の繊維を編み込んだ素材。保温力とロフト復元力が高く、スタッフバッグへの出し入れの繰り返しによるへたりを防ぎます。 |
ノースフェイス | サーモボール | ポリエステル100%の繊維を直径3ミリから5ミリの球状に形成した素材。水に鵺らた場合も体積減少率が低いため、ロフトをキープしやすい。 |
パタゴニア | 60グラム・フルレンジインサレーション | 伸縮性と通気性もある化繊インサレーションで、着たままの行動を続けたいときに最適なバランスの素材です。 |
パタゴニア | 65グラム・プルマフィルインサレーション | パタゴニア史上最も軽量でコンパクトになる化繊で、保温性能も含めてほぼダウンと言っても過言ではないほど。 |
ファイントラック | ファインポリゴン | シート状の繊維にシワを持たせて層状にした素材。保温性を確保しつつとにかく水濡れに強く速乾性に優れています。 |
ホグロフス | QuadFusion Mimic | らせん状の繊維で一つ一つが粒上になった素材。濡れてしまってもロフトがつぶれない構造なので保温力が落ちません。 |
おすすめの化繊インサレーション
【モンベル】U.L.サーマラップジャケット
モンベルのU.L.サーマラップジャケットは「エクセルロフト」が使用されているため普段使いから登山までヘビーユースしてもなかなかへこたれません。腕や肩や脇部分はストレッチ性が高いシェル素材が使われているので化繊インサレーションを着たまま行動することを想定している人におすすめです。値段も安いので一着目におすすめ。
【パタゴニア】ナノエア・フーディ
ナノエア・フーディは「60グラム・フルレンジインサレーション」が使用されたモデルで、インサレーションとは思えない柔らかい見た目とストレッチ性が特徴です。通気性が高いので、保温性重視よりも行動着としても化繊インサレーションを使いたいと考えている人におすすめです。
【パタゴニア】マイクロ・パフ・フーディ
パタゴニアの保温性が高く軽量の「65グラム・プルマフィルインサレーション」が使用されたモデル。コンパクトにパッキングしたい人におすすめのモデルです。独自のキルティング加工は見た目のかっこよさだけでなく、中綿のズレや寄りが少なくなる設計になっているので部分的に冷たいエリアができにくいメリットがあります。
軽量コンパクトを追求しているのでポケットも最低限でドローコードやプラスチックパーツは一切ありません。
【ファイントラック】ポリゴン4フーディ
一見キルティング加工がないので化繊インサレーションに見えませんが、これがファイントラックの層状素材「ファインポリゴン」の特徴でもあります。ベンチレーションと通気性の高い表地で行動しながらでも熱気を放出しやすく、何より雨や汗に強いのが特徴です。
【ホグロフス】ESSENS MIMIC HOOD
ホグロフスの水に強い「QuadFusion Mimic」が使用された化繊インサレーションです。ロフトがつぶれにくく偏りにくい性質があるのでコールドスポットになりやすい縫い目を極力少なくしています。雨や雪など水分が多いコンディションでの使用が想定される人におすすめです。
【アークテリクス】アトムLTフーディ
アークテリクス独自素材の「コアロフト」が使用された化繊インサレーションです。部分的にインサレーションとフリースを組み合わせたモデルなので、保温性はそこそこで動きやすく、細身で薄手なので行動着として使いやすくなっています。